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斑入ツバキ・錦葉ツバキ


 斑入りツバキについて少し紹介します。ツバキの斑入り品種もいいものです。とにかく育ててみましょう。
 「斑」についての用語も解説しています。お好きな斑入り品種をさがす参考になればうれしくおもいます。

「中斑」

葉の中央に斑が入るタイプ。
斑の大きさや形は品種によって異なる。
ユキツバキ系品種に多い、というより、ほとんどがユキツバキ系品種である。
斑の色は「黄斑」がほとんどだが「黄緑斑」のものもある。「白斑」は少ない。
「中斑」形質は葉形の乱れない「整形葉」のものがほとんどである。
葉の縁は緑で中が斑なので成木でもおちついた美しさがある。
(参考写真品種‘太陽(新潟)’)

「覆輪斑」「外斑」

葉の縁に斑が入るタイプ。
このタイプの斑は、普通の葉形である「整形葉」に覆輪斑が入る品種と、
葉形が乱れる品種がある。
葉形が乱れる品種には、やや形がくずれる形質と、大きく乱れる形質がある。
斑入ツバキによくもちいられる「弁天葉」と言うのは
この葉形が乱れる覆輪斑品種にもちいられることがおおい。
特に、大きく乱れる覆輪斑の形質を「乱れ弁天葉」ともいう。
「覆輪くずれ」とは斑の幅が安定せず、所々消えたり、また中央に食い込んだりする事をいい、
ほとんどの「外斑」「覆輪斑」。の品種が「覆輪くずれ」になる。
「覆輪斑」と「外斑」は同じ意味だが一般に「覆輪斑」のほうを用いることが多い。
「覆輪斑」の品種の多くは「枝変り」を固定したものである。
ユキツバキ系のみならず、どんな原種系統の品種にも「覆輪斑」が出る可能性がある。
斑は遺伝的なものなのかウイルスによるものなのかも定かではないが、
ここであげる「覆輪斑」とは、モザイク病のウイルスによる斑ではないものとする。
(参考写真品種‘越の吹雪’)
左は‘麗山峯’右は‘錦の峰’

「整形葉覆輪斑」

普通の葉形である「整形葉」に「覆輪斑」が入る品種。
「覆輪斑」の品種は葉形が乱れるものが多いだけに「整形葉覆輪斑」の品種は貴重である。
品種数も少ない。
「整形葉覆輪斑」の品種は斑の部分が多い「深覆輪」で「覆輪くずれ」になる。
斑の部分が多いだけに成木になると非常に目立って美しい。
(参考写真品種 左は‘黄覆輪紅唐子’右は‘錦葉西王母’)
上は‘弁天西王母’下は‘弁天神楽’

「弁天葉」

先にあげたように葉形が乱れる覆輪斑品種をツバキ界では「弁天葉」と言うことが多い。
また、覆輪斑品種以外の特殊な斑入品種にも「弁天葉」を用いることがある。
安藤芳顕著の『つばき』には「弁天」の名の由来が記載されており、
   “歌舞伎白浪狂言の弁天小僧に由来するかと思われ、
      白覆輪から白浪への連想に、江戸趣味のしゃれが感じられます。”
と、ある。あらためて江戸文化のゆたかさを感じさせられる。
また、「弁天」と名のつく品種は多く、斑の色も「黄斑」「白斑」「黄緑斑」さまざまである。
「後暗み」するものも多い。 樹性は仰々しさを感じるものが多く、生きた美術品という感もある。
「弁天」の名のひびきもひきたたせるものがある。
鉢植えにし、盆栽あつかいで楽しむとおもしろい。庭木にはあまりむかないかと思う。
(参考写真品種 上は‘弁天西王母’下は‘弁天神楽’)
左は‘麗山峯’右は‘錦の峰’

「掃込斑(はきこみふ)」

葉の全面に入らず、ところどころに箒でさっと掃いたように筋が入るような形質をいう。
「掃込斑」が葉の全面に入る場合「散斑」というが、
「散斑」にはもっと細かい斑の霜降(しもふり)もあるので、できれば明確に表記したい。
「掃込斑」形質の品種数は斑入品種のなかでも非常に少ない。
ユキツバキ系品種で‘錦の峰’、‘麗山峯’等があるが、
‘麗山峯’は全面に入り「散斑」になりやすい。品種により斑の程度には差があるのは当然であるが、
この「掃込斑」形質は厄介で他の斑形質より形質の維持がたいへんである。
突然まったく斑の入らない枝ができたり、
逆に全面斑の葉ができて成長が止まったりと不安定なものが多い。
このように一般的な園芸品種の「掃込斑」よりも、
ツバキの「掃込斑」は扱いにくい形質である。
「掃込斑」の斑が遺伝的なものなのかウイルスによるものなのかも定かではないが、
多くは「枝変り」を固定したものである。
(参考写真品種 左は‘麗山峯’右は‘錦の峰’)
‘せせらぎ’

「散斑」

葉一面に細かい斑が入るタイプ。ツバキには少ない形質だが、あることはある。
「散斑」は大きく分けると2通りに分けられると思われる。
一つは先にあげた「掃込斑」が全面に入り「散斑」になるものであり、
枝により不安定さが大きいもの。斑が全面に入り美しい。
もう一つは「霜降り」状の斑で細かい斑が全面に入るものである。
「霜降り」は安定して株全体に入るようだ。
「散斑」や「霜降り」がウイルスによるか遺伝によるかはわからないが、
ここであげている「斑」は接木ではうつらないものをいい、
接木でうつるモザイク病のウイルスによる斑で「散斑」や「霜降り」に見えるものではないものとする。
(参考写真品種「霜降り」タイプの「散斑」品種‘せせらぎ’)
左は‘錦葉覆輪一休’右は‘越の吹雪’

「斑の色について」

斑の色は、まさにいろいろである。「黄斑」「白斑」「黄緑斑」などとよく表記するが、
若葉のころと晩秋では色がちがうことはほとんどであるし、
また、日照加減や、新穂がいつの季節に伸びるかによっても斑の色は変わる。
芽出しの頃は「黄緑斑」あるいはもっと不鮮明な斑だが、
後に「黄斑」「白斑」と斑の色が冴えることを「後冴え」という。
逆に、芽出しの頃は「斑入」であるとわかるが、
生育して固まれば斑が不鮮明になってしまうことを「後暗み」という。
また、一年中安定した色合いを見せる斑の状態を「周年芸」という。
「斑」は「芸」なのである。
現在、ユキツバキ系がほとんどの「中斑」の品種は「黄斑」が多く
「黄緑斑」のものも「後冴え」することがおおい。
「覆輪斑」の品種の斑の色はいろいろである。
「整形葉の覆輪斑」品種は「黄斑」「黄緑斑」が多く、
「覆輪斑」で「白斑」のものは「不定形葉」の品種に多い。
しかし、「不定形葉」の斑入り品種の中で「白斑」の品種の割合は少ない。
つまり、ツバキの全斑入品種のうち「周年芸」で「白斑」の品種は非常に少ないのである。
貴重である。
斑の部分に葉緑体があり光合成が行われているかいないかは、私はまだ調べていません。
植物の緑色部分には葉緑体があって、その中に含まれる色素「葉緑素」が、
植物の緑色をつくっていると中学生のときにおそわりました。 植物の生育活動である光合成は葉緑体でおこなわれるので、
葉緑体の無い「斑」の部分は光合成がおこなえない。
しかし、これは「周年芸」で「白斑」の品種の場合であると思われる。
「黄斑」や「黄緑斑」のものは色があるので何らかの細胞活動をおこなっているように思える。
とくに周年「黄緑斑」の形質は光合成をおこなっているように思える。
また、「黄斑」や「黄緑斑」の品種に「後冴え」「後暗み」がおこるのも
細胞活動の程度によるものと思われる。
これらのことから、「斑」には光合成する斑としない斑があると考えられるが、
実際のところヨウ素反応してみないとわからない。
時間があればしてみたい。
(参考写真品種 左は‘錦葉覆輪一休’右は‘越の吹雪’)









おすすめ「斑入ツバキ」

●‘多福弁天’
 江戸時代から受け継がれてきた貴重な代表的斑入ツバキ。
葉は地味柄だが特殊な斑である貴重品種。
花は幅広白覆輪の底紅が平開したとき星型になり、
これまた他に類を見ない貴重花。ぜひ一本育てたい。

●‘越の吹雪’
 特殊なタイプの幅広白覆輪のツバキ。
斑入ツバキの中でも最も美しい品種の一つ。
斑の色は周年白色。葉の形は整形葉に近い。
春の新芽では幅広白覆輪もしくは覆輪くずれであるが、
その時期以降の土用芽や秋芽では散斑状の覆輪になる特殊形質。
花は紅色一重筒咲小〜中輪で葉との調和がよい。
実はエメラルドグリーンとでも言いたい。
良い色のうす緑色でたてに薄く縞が入る珍しい形質。
見た目より樹勢よく育てやすい。肥培して新芽を春以外にも伸ばしたい。

●‘太陽(新潟)’
 黄中斑の斑入ツバキ。
中斑のツバキでは本種が入手しやすい。
比較的強く、樹性も癖が少なく育てやすいので推薦。柄も良い。
花は紅色一重平開咲小〜中輪でユキツバキタイプの花形。

●‘錦葉覆輪一休’
 黄覆輪のツバキ。派手な三光斑である。
江戸古品種の黄緑覆輪のツバキ‘覆輪一休’の枝変りで
近年久留米で固定された注目新品種。丈夫で育てやすい。
花も‘覆輪一休’と同じで桃地に白覆輪と紅の縦絞りが入る八重中〜大輪であり、
これまで斑入ツバキは花がさえないといわれてきた
一般常識をくつがえしてくれそうである。

●‘弁天神楽’
 貴重な江戸古品の斑入ツバキ。
葉は白覆輪くずれで乱れ葉になり、いわゆる乱れ弁天葉。
芸はきつくでて仰々しい。周年白色斑で深い緑色との対比がよい。
花は‘太神楽’の枝変りであるというが、
この手の斑入り品種は樹勢が弱いのか
‘太神楽’のように極大輪咲にはならず中輪牡丹〜獅子咲。
内側の弁には葉の乱れと同様の乱れ形質が出る。
江戸の斑入り文化を感じる一品であり、鉢植えで盆栽仕立てにしたい。

●‘錦葉西王母’
 整形葉の黄覆輪〜覆輪くずれの斑入ツバキ。
整形葉の品種では本種が安定して美しい芸を見せる。
花は親木‘西王母’と同じで桃色一重筒〜抱え咲の中輪。丈夫で育てやすい。



2005.01.09.追記-2005.01.06.記
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